院長あいさつ

新型コロナ感染症が全世界で猛威を振るうなか、日本においても多くの方々が影響を受け、尊い命が失われています。私たちはコロナ感染症対策の方法をその経験を通して学び、さらにワクチン接種を通してその制御に向けて新たにチャレンジしていこうとしています。当地方でも、気仙沼市立本吉病院、南三陸病院、保健所、市医師会、市役所などと緊密に連携し、濃厚接触者対策、発熱者・疑似症例への対応、感染者に対する医療提供を行ってまいりました。その中で、老人福祉・介護施設やいくつかの事業所、学校でのクラスター発生などを経験しながら、病院は、通常の医療とコロナ感染症対応を両立しながら診療を行うことができ、幸いなことに現在のところ大きな問題を経験することなく現在に至ることができました。
しかしながら、全国では多くの医療施設において院内感染が発生し、診療制限をせざるを得なくなるなど医療の提供が困難となっている地域がみられております。他の医療機関が少ない気仙沼においては、そのような状況はどうしても避けなければならないため、病院では職員の健康管理やコロナ感染症対策を徹底するとともに、市民の方々にも、来院時の発熱の有無のチェックや面会禁止など、多くのご不便とご心配をおかけしています。感染症に対する個々人の行動変容を続けながら、全国にワクチンがいきわたり、新規感染者数が減少、重症患者が抑制されることによって、警戒レベルを下げられるまでには、もう少し時間が必要のようです。市民の皆様のご協力をいただけますようお願い申し上げます。
さて、気仙沼地方は全国に先んじて高齢化が進み、同時に少子化が進行しています。それに伴い疾病構造が変化し、医療ニーズが質的・量的に大きく変化していくと考えられています。例えば、少子化に伴い周産期医療や小児医療はその数は減ることが予想されますが、当地域は他の地域の医療機関からは離れた地理的状況にあることから、これらの医療機能を堅持していくことの重要性は減ずることはありません。一方、高齢化の進行とともに脳血管疾患、心疾患、呼吸器疾患、がん、整形外科的疾患の患者が増えることが予測されていますが、高齢者は元々フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)の状態にあることが多いため、病前には自立した生活を送れていた方でも、病後には日常生活における基本動作が障害され、通常の生活が送れないために退院できない方が増えると考えられます。今後の医療体制の方向性を考えると、疾病の治療に必要な質の高い標準的医療を備えることは最も重要ですが、病後の体力低下を回復させるためにリハビリテーション医療を充実させたり、退院後に生活が送れるように患者支援を行うことの重要性はさらに増すものと考えられます。そして、医療機能分担の観点においては、気仙沼市立本吉病院や気仙沼市医師会と緊密に連携し、「地域包括ケアシステム」の充実を通して市民の福祉の向上に貢献していきたいと考えています。
気仙沼市立病院は皆さまとともに、患者さん第一の医療を実現することを理念として歩んでまいります。これからもご支援,ご指導の程よろしくお願い申し上げます。
気仙沼市立病院 院長 横田 憲一