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当院の癌治療について(TOP)へ

 疾患別治療内容
外 科
  ・食道癌
    1)食道とは?
 食道はのどと胃をつなぐ管状の臓器で食物の通るところです。
食道は部位により頚部食道、胸部食道、腹部食道と呼びますが、
最も長い胸部食道に癌が発生することが多いようです。
従来、食道癌は治すことが非常に困難な癌でした。
それは食道が周りを心臓、大動脈、肺、気管などに囲まれており、手術が大変難しい
位置にあるからです。しかし、先人医師たちの大変な努力と果敢に手術に挑んだ結果、
手術による治癒率が45%前後と向上してきています。
    2)食道癌の治療
 食道癌の治療では、病気の進行度や体の状態によって治療法を選びます。

@内視鏡的治療
 癌が食道の粘膜という表層にとどまっている早期の段階では
内視鏡による切除が可能です
。喉を麻酔し内視鏡を胃内に挿入します。
そして癌部に生理食塩水を注入して病変部を盛り上がらせ
電気メスにて癌を切除します。

A内視鏡治療の実績・治療成績
 ただ今、準備中です。もうしばらくお待ちください。

B手術による治療
 癌がある程度進行し内視鏡による治療ができないときには
手術による治療が必要です
。胸部食道は周りを心臓、大動脈、肺、気管などに
囲まれるなど、手術が難しい位置にあります。
また、食道の切除に伴い胃を用いた再建手術も併せて行うことが必要なので、
手術は開胸に加え、開腹、および頚部の手術も必要となります。
手術に必要な時間は平均7〜8時間と長時間を要し、
かつ大掛かりなものです。従って、患者さんの体におよぶ影響は甚大で、
生命の危険が大きい手術です。しかし、手術法や回復のための治療法の進歩により、
約30年前では完治する確率は10〜20%だったのが、
現在では40〜50%と飛躍的に改善しています

これに加え、最近の研究では手術の前に抗癌剤治療を行なうと、
さらに10%前後の治癒率の改善が得られる
ことが明らかとなってきており、
今後に期待されています。
 近年、小さな傷で治療できる内視鏡を用いた鏡視下手術が
東北大学病院で行なわれています。この手術は開胸開腹手術に比べ痛みが少なく、
術後の呼吸機能の温存に有利である利点がありますが、手術時間が長く、
一部の医師にしかできないという欠点もあります。
当院では、手術の安全性を重視しこの方法は行なっていません。
C手術以外の治療法
 また、高齢であったり心臓や肺などの機能が弱く手術には耐えられない場合や、
どうしても手術を受けたくない方は、
化学療法に放射線療法を加える治療により一定の効果を上げることができます
抗癌剤の副作用や放射線障害の心配はありますが、
この治療により約35%の完治率が得られます。

   

D当科の治療成績
 平成7年から17年までの11年間に、当科では95例の食道癌切除を行ないました。
癌の進行のために完全に切除できなかった5例を除く90例に対し、
完治を期待できる手術を行うことができました。
  癌の進行度別では、0期8例、I期13例、II期28例、III期28例、IVA期12例でした。
その手術の成績は、5年生存率でみると、0+I期67.3%、II期46.6%、III期31.6%、
IVA期20.0%、であり、全体の症例では43.8%でした
0+I期の成績が低めに出ましたが、合併症による在院死亡例が多かったことが
その原因と考えています。全国での成績は、5年生存率41.7%とされており、
当院での成績(43.8%)と同等です。
ですから当院の食道癌手術成績は全国水準の治療であると言えます。

 食道癌の治療成績

病期
当院の5年生存率
0+I 期
67.3%
II 期
46.6%
III 期
31.6%
IVA期
20.0%
全体で
43.8%
  全国の病院での治療成績と同等の結果でした。当院の食道癌治療は
全国レベルといえます。
  術前化学療法を行うことで、さらに治療成績が改善するものと考えています。

E当科での手術の危険性、死亡率
  手術のために術後1カ月以内になくなった方はいませんでした。
しかし合併症によって一度も退院できずに亡くなった方を7例(7.8%)認めました
死亡原因別では、肺炎が3例、脳梗塞が1例、
縫合不全から敗血症となったものが3例でした。
   

  ・胃癌
  1)胃癌とは
 日本人の癌の中で最も多い胃癌について説明します。
胃癌は胃壁のもっとも内側にある胃粘膜から発生する癌で、
進行すると次第に外側や内側に増大し様々な症状を引き起こすとともに、
他の臓器やリンパ節にも転移をおこします。治療上、癌の早期発見は大変重要で、
癌検診などによって早期癌の数は増えていますが、
必ずしも早期発見できるわけではありません。
 胃癌の治療法には手術による治療、抗癌剤による治療がありますが、
現在のところ抗癌剤のみで胃癌を完治させることは不可能で、
癌を治すためには癌巣を切除することが必要です。
アガリクス、丸山ラクチンその他の免疫療法については医学的な根拠がなく
効果は疑問です。

2)胃癌の治療

@内視鏡的治療
 癌が胃の粘膜にとどまり、細胞の悪性度が低く、
潰瘍を伴わない2cm以下の病変に対して、
内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)を行います。
それ以上の病変に対しては、手術療法を行うのが標準的な考え方です。

A内視鏡治療の実績・成績
   ただ今、準備中です。もうしばらくお待ちください。

B外科的治療(手術)
 当科では年間約60〜70例の胃癌手術を行っています。
癌の存在部位により、胃全摘術、幽門側胃切除術(十二指腸側2/3程度の胃切除)、
噴門側胃切除術(食道側1/2程度の胃切除)などが行われ、
それに加えリンパ節郭清が行われます。また、癌が他臓器に直接およぶ場合は、
完治が望める場合は臓器の合併切除を行う拡大手術を行ないます。
 最近、全国的には適応症例を限って鏡視下(内視鏡的)手術が試みられていますが、
当科ではこの方法は行っておらず、全例開腹による手術を行っています。
これは、鏡視下手術の安全性が確立されていないことと、
手術の有効性が確立されていないことなどが理由です。
    3)当院での手術実績
 平成7年から17年までの11年間に当科で手術を行なった胃癌症例は682例でした。
癌の進行によって切除しきれなかった89例を除く593例(87%)に
完治を望める手術を行いました。癌の進行度別では、IA期290例、IB期101例、
II期68例、IIIA期58例、IIIB期33例、IV期42例でした。
癌の部位および癌の進行度によって手術法は異なりますが、
噴門側胃切除が5例、胃全摘術が138例、幽門側胃切除術が305例、胃部分切除術が4例、癌の進行によって他臓器を合併切除したものが143例
(胃全摘・摘脾術が85例、肝転移を同時に切除したものが3例)でした。

4)治療成績

 当院での術後の5年生存率は、IA期93.4%、IB期87.7%、II期70.4%、IIIA期50.0%、
III B期28.2%、IV期12.6%でした。
全国集計による5年生存率は、IA期93.4%、IB期87.0%、II期68.3%、
IIIA期50.1%、IIIB期30.8%、IV期16.6%ですから、当院の成績は全国水準といえます

胃癌の治療成績(5年生存率)
病期
当院の5年生存率
全国の成績
I A 期
93.4%
93.4%
I B 期
87.7%
87.0%
II  期
70.4%
68.3%
III A期
50.0%
50.1%
III B期
28.2%
30.8%
IV 期
12.6%
16.6%
5)手術の危険性、死亡率
 術後1カ月以内の手術直接死亡例は4例(0.9%)でした。
死亡原因別では、非閉塞性腸管虚血症から多臓器不全となったものが1例、
吻合部縫合不全から敗血症になったものが2例、肺炎から敗血症になったものが
1例でした。また、在院死亡例は手術直接死亡例を除くと3例みられました。
その原因は、急性心不全が1例、肺炎から敗血症をきたしたものが1例、
膵切除断端部から膵液瘻をきたし敗血症となったものが1例でした。
   

  ・大腸癌/直腸癌
   近年、大腸癌、直腸癌は増加傾向にあり、高齢化とともに手術の数も
増えてきています。健康診断では便潜血反応検査(検便検査)を行っていますが、
潜血反応陽性者の中に大腸癌、直腸癌の患者さんが見つかることが多いので、
積極的に検査を受けるのが良いと考えられます。
 この癌も治すためには内視鏡あるいは手術で癌を切除することが必要な病気です。
抗癌剤治療も一定の効果があることがわかってきていますが、
これだけで病気を治すことはできず、抗癌剤治療は手術の前あるいは後に
手術の効果を高めるために行うのが一般的です。

1)大腸・直腸癌の治療法

@内視鏡的治療
 癌が大腸・直腸の粘膜にとどまっている病変に対しては
内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)を行い
完治させることができます。
それ以上の病変に対しては、手術療法を行うのが標準的な考え方です。

A内視鏡治療の実績・成績
 ただ今、準備中です。もうしばらくお待ちください。

B外科的治療(手術)
 大腸癌の場合、病巣から約10cmの正常な大腸とその領域のリンパ節を
扇状に切除するのが治療の原則です。
そして、大腸同士をつなぎ合わせます(これを吻合といいます)。
 直腸癌の手術では、人工肛門になるかが心配されます。
人工肛門が必要かどうかは、癌のできた場所が肛門に近いかどうかや、
癌の大きくなり方で決まると考えてよいと思います。
最近の手術法の進歩で、肛門から5〜6cmより中にできた場合は肛門の温存が可能
なってきています。それより肛門側の場合は
癌をとり残さないように肛門を含めて直腸を全摘する方がよいでしょう。
仮に人工肛門となっても、十分に訓練をすれば人工肛門をつけた状態で
日常生活は以前とほぼ同じに過ごすことができます。
病気を治すためには、前向きな気持ちで手術を受けることが大切です。
 また大腸癌・直腸癌は、特に肝臓に転移をおこしやすい癌であることが
知られています。経過中に約20%の方が肝転移をきたすとされています。
以前は、肝転移を治すことはできないと考えられていましたが、
1980年頃から肝転移の場合でも切除をすれば治ることがわかり、
現在では切除可能な肝転移には積極的に手術を行なうようにしています
また、直腸癌が高度に進行し周囲の臓器に及んだ場合でも、
生活の質(QOL)は低下しますが、
骨盤内臓全摘術という方法で癌の全摘出を目指すようにしています。
   
2)当院での手術実績

 平成7年から17年までの11年間に当科で手術を行なった
大腸・直腸癌症例は667例でした。667例のうち、開腹したところ
高度の進行のため切除できなかった57例を除く610例に

3)治療成績
 大腸癌の術後の5年生存率は0−I期83.7%、II期80.8%、IIIa期68.3%、
IIIb期65.7%、IV期44.7%であり、直腸癌の術後の5年生存率は
0−I期88.7%、II期79.8%、IIIa期63.1%、IIb期43.6%、IV期18.2%でした。
 全国の成績は、大腸癌の5年生存率は0期94.8%、I期90.6%、II期83.6%、
IIIa期76.1%、IIIb期62.1%、IV期14.3%であり、直腸癌では0期92.9%、
I期89.3%、II期76.4%、IIIa期64.7%、IIIb期47.1%、IV期11.1%とされています。
 当院の成績は 0−I期において若干低い傾向がありますが、その他の病期では
ほぼ同等の成績であり、大腸癌IV期ではむしろ全国平均を大きく上回っていると
いう結果でした



 大腸癌の治療成績(5年生存率)

病期
当院の5年生存率
全国の成績
0−I 期
83.7%
92.7%
II  期
80.8%
83.6%
III a 期
68.3%
76.1%
III b 期
65.7%
62.1%
IV  期
44.7%
14.3%

 直腸癌の治療成績(5年生存率)

病期
当院の5年生存率
全国の成績
0−I 期
88.7%
91.6%
II  期
79.8%
76.4%
III a 期
63.1%
64.7%
III b 期
43.6%
47.1%
IV  期
18.2%
11.1%
4)手術の危険性、死亡率 
 手術直接死亡例は3例(0.4%)でした。これら3例はすべて心筋梗塞
あるいは致死的不整脈による循環器疾患によるものでした。
また、在院死亡例は手術直接死亡例を除くと10例でした。
その死亡原因は肺炎が2例、敗血症が2例、癌死が6例でした。
   

  胆管癌/胆嚢癌/十二指腸乳頭部癌
     これら胆道系悪性腫瘍は黄疸の症状で発症することが多く、他の消化器癌と同様に、
手術で癌と周りの転移の恐れのあるリンパ節を切除することが必要です。
胆道系は周りに、肝臓、膵臓、門脈、肝動脈といった体の急所となる臓器があり、
手術は手術時間も長く出血量も多い肝切除や膵頭十二指腸切除など
生命の危険の高い手術が必要となります

また、黄疸がある状態というのは肝臓が極めて弱っていることを意味しますが、
黄疸の高い状態で手術を行うと、術後に肝臓が働けなくなってしまい
(このことを肝不全といいます)生存が困難となります。
従って、癌を切除する手術の前には、まず、黄疸を下げて
肝臓を元気にする治療が必要となります
。PTCD(肝臓の中に管を刺して
胆汁を体外に流し出す方法)などによって十分に黄疸を下げるようにし、
その後に癌を治す手術を行うようにします。
 平成7年から17年までの11年間に、当科で手術を行った胆道系悪性腫瘍は59例で、
胆管癌33例、胆嚢癌16例、十二指腸乳頭部癌10例でした。



(1) 胆管癌
 癌の発生部位は、肝門部・上部胆管癌11例、中部胆管癌15例、
下部胆管癌7例でした。行った手術は、肝切除を伴う胆管切除が8例、
胆管切除が11例、膵頭十二指腸切除が12例、膵全摘術が2例でした。
癌の進行度別ではI期3例、II期10例、III期10例、IVA期7例、IVB期2例でした。


 手術成績をみると、手術直接死亡例はありませんでしたが、
1例(3.0%)が術後2ヶ月で肝不全で在院死しました。全体での術後の生存率は、
1年生存率74.3%、2年生存率49.3%、3年生存率41.1%、5年生存率28.2%でした。
 胆管癌の治療成績
 
1年生存率
74.3%
2年生存率
49.3%
3年生存率
41.1%
5年生存率
28.2%


(2) 胆嚢癌
 11年間に16例の胆嚢癌手術を行ないましたが、うち2例が胆石症に対して
胆嚢摘出術を行った後の病理検査で胆嚢癌と診断され、再手術を行なったものでした。
施行した手術では、肝切除を伴う手術を5例に行ない、拡大胆嚢摘出術を行なったのは11例でした。いずれも胆管切除術を併施しました。
病期別では、I期6例、II期1例、 III期6例、 IVA期3例でした。
術成績では手術直接死亡例、在院死亡例は認めませんでした。
術後の生存率は、1年生存率81.3%、2年生存率62.5%、3年生存率42.9%、
5年生存率42.9%でした。全国の成績は5年生存率で42%と報告されています。
当院の症例数は決して多くはありませんが、全国水準の成績です

 胆嚢癌の治療成績
 
1年生存率
81.3%
2年生存率
62.5%
3年生存率
42.9%
5年生存率
42.9%


(3)十二指腸乳頭部癌
  11年間に10例の十二指腸乳頭部癌を経験し、全例に膵頭十二指腸切除術を
行ないました。病期別ではI期3例、III期6例、IVA期1例でした。
 手術成績では手術直接死亡例は認めませんでしたが、2例〔20%〕の在院死亡例を
認めました。1例は、肺炎から敗血症をきたしたもので、
もう1例は肝不全にて亡くなったものでした。
術後の生存率は、1年生存率70%、2年生存率60%、5年生存率33.3%でした。

 十二指腸乳頭部癌の治療成績
 
1年生存率
70.0%
2年生存率
60.0%
3年生存率
33.3%
5年生存率
33.3%

   

  ・膵臓癌
    1)膵臓癌とは
 膵臓は体の最も深いところにある臓器で、癌の性質も極めて悪性なので
治すことが最も難しい癌であると考えられています。
検診などで偶然に腫瘍が見つかる稀な場合を除けば、早期の発見は困難で、
多くは切除不能か切除できても進行癌であることが多いのが実情です。
最近、ジェムザールという新しい抗癌剤が効果があるといわれていますが、
結局のところ、この薬でも膵臓癌を治すことはできません。
やはり、他の消化器癌と同様に手術によって癌を完全切除することが必要です
 手術の方法は癌の発生部位や癌の進行度によって異なりますが、
膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除兼脾摘術、膵全摘術が状況に応じて選択されます。
膵臓には門脈、肝動脈、上腸間膜動脈という重要な血管が周りに存在するため、
これらに癌が及んでいる場合には血管を一緒に切除しそれを再建しないとならず、
手術はさらに高度な技術が必要となるとともに、手術後の合併症、
特に血管からの大出血によって致死的となる危険が増します。
また、膵臓の切除後には膵炎や縫合不全を起こし易く、
腹膜炎や敗血症などの致死的合併症に至る危険も高いと考えられます。
膵臓癌の手術はかなりの危険を伴いますが、十分に病状を説明してもらい
納得のもとに手術を受けられるのが良いでしょう。

2)
膵臓癌手術の実績
 平成7年から17年までの11年間に、当科では31例の膵癌切除手術が行われました。
癌の占拠部位別では、膵頭部から発生したものが23例、
膵体尾部からのものが8例でした。手術術式別では、膵頭十二指腸切除術が22例、
膵体尾部切除術が6例、膵全摘術が3例に行われました。
癌の進行が高度で、門脈合併切除再建術を併施したものは11例、
総肝動脈切除再建術を併施したものが2例含まれました。
癌の進行度別では、I期はみられず、II期1例、III期が13例〔41.9%〕、
IVA期11例〔35.5%〕、IVB期6例〔19.4%〕と進行したものがほとんどでした。
肝転移を認めたものが2例あり、肝部分切除術を同時に行いました。

3)治療成績
 術後の生存率は、1年生存率45.2%、3年生存率25.1%、5年生存率16.7%でした。
本邦における膵癌の全国成績は、膵頭部癌の5年生存率が13.0%、
体尾部癌が18.2%ですから、当院の成績はこれに相当するものであり、
全国水準の治療であると言えます。
 膵臓癌の治療成績
1年生存率
45.2%
3年生存率
25.1%
5年生存率
16.7%
全国の成績
膵頭部癌 13.0%
膵体尾部癌 18.2%

4)手術の危険性・死亡率

 術成績では手術直接死亡例が1例(3.2%)みられました。
死亡原因は非閉塞性腸管虚血症による敗血症でした。
また、術後の合併症や癌の急速な進展によって1度も退院できずに亡くなった
在院死亡例は手術直接死亡例を含め6例〔19.4%〕認めました。
その内訳は癌死が2例、肺炎から敗血症をきたしたものが1例、
腹腔内膿瘍から敗血症をきたし多臓器不全となったものが2例でした。
   

  ・肝癌(原発性転移性
   
原発性肝癌
1)原発性肝癌とは
  原発性肝癌の多くはB型肝炎、C型肝炎に続発することが多く、
慢性肝炎、肝硬変といった肝臓に余力が少ない患者さんが多いという背景があります。
基本的には癌を切除するのが治癒率の観点からは最も効果があるとされていますが、
切除できる肝臓の量が慢性肝炎、肝硬変の存在下では限られるので、
切除可能な場合は手術を第一に選択しますが、
腫瘍が多発性に広い範囲に広がっていたり、腫瘍が大きくて大量の肝切除が
必要なために術後に肝不全の発症が危惧されるなど手術が危険と考えられる場合は、カテーテルを用いて癌組織に抗癌剤を高濃度に投与する治療を選択するように
しています。
2)手術実績
  11年間に11例の症例に対して12回の肝切除術を行いました。
手術術式別では拡大肝右葉除術1例、肝区域切除術3例、肝部分除術6例でした。
これらの症例で、手術直接死亡例、在院死亡例は認めませんでした.。


転移性肝癌
1)転移性肝癌とは
 大腸癌、直腸癌などの癌が肝臓に転移をきたしたものを転移性肝癌といいますが、
以前にはこの状態は癌の末期状態として考えられ
積極的な治療の対象にはなりませんでした。
昭和60年頃から肝臓の転移でも
@おおもとの癌が完全に切除されている、A肝臓以外に転移がみられない場合は、
切除によって完治も期待できることがあるとの考えが広まり、
積極的に切除が試みられるようになってきました。
われわれもこの考えに従い積極的に転移巣の切除を行うことにしています
しかし、転移の数が多すぎたり、切除によって術後の肝不全の発症が
心配される場合は抗癌剤治療を第一選択にするようにしています。

2)転移性肝癌の手術実績
  11年間に63例の症例に対して71回の肝切除術を行ないました。
原因となった疾患別では、大腸・直腸癌49例、食道癌2例、胃癌5例、
十二指腸平滑筋肉腫1例、胆管癌2例、膵癌2例、直腸GIST 1例、膀胱癌1例でした。
  症例の最も多い大腸・直腸癌では49例の患者に56回の肝切除術を行ないました。
肝転移の出現時期では、主病巣治療と同時性のものが24件、異時性が32件でした。
転移巣の占拠部位別では、片葉が41件、両葉が15件でした。
また、転移巣の個数別では3個以下が38件、4個以上が18件でした。
施行した手術術式は、拡大肝葉切除術2件、肝葉切除術17件、肝区域切除術10件、
肝亜区域切除術2件、肝部分切除術32件(重複あり)でした。
3)治療成績
  最も症例数の多い大腸・直腸癌の肝転移に対する手術成績をみてみると、
術後の生存率は、1年生存率74.8%、2年生存率50.9%、3年生存率28.0%、
5年生存率18.0%でした。
  欧米の1990年以降の論文報告例では、肝切除後の5年生存率は32〜38%でした。
本邦における成績も概ね同様です。これらの成績と比べると当院の成績は
やや劣るようにみえますが手術適応を適正化するなど成績向上を
目指していきたいと考えています。
 大腸・直腸癌肝転移の治療成績
1年生存率
74.8%
2年生存率
50.9%
3年生存率
28.0%
5年生存率
18.0%

4)大腸・直腸癌肝転移の手術危険性・死亡率
 術直接死亡例を2例(3.8%)認めました。
1例は術後の肝不全にて術後7病日に死亡した症例で、
もう1例は肺塞栓症で術後1病日に死亡した症例でした。
これら手術直接死亡例を加えた4例(7.1%)が
一度も退院できずに亡くなった在院死亡例でした。
   

  ・肺癌(原発性/転移性
   
(1) 原発性肺癌
 肺癌には原発性肺癌と転移性肺癌の2つがあります。
原発性肺癌、特に扁平上皮癌という種類の癌は喫煙、
大気汚染などが危険因子となることが特に有名ですが、
最近、腺癌という種類の癌が増えることにより、
肺癌は全体としてその数が年々増加しています。
手術があまり有効でない小細胞癌という種類の癌を除く、腺癌、扁平上皮癌、
大細胞癌に対しては、手術が可能であれば手術を第一に治療法として選択します。
これに放射線治療と抗癌剤治療を組み合わせるのが一般的治療です。
 ■ 原発性肺癌の種類
1. 扁平上皮癌
  喫煙が癌の発生に関係していることで有名。
2. 腺癌
  喫煙とはあまり関係ないが、
最近増加していることによって肺癌患者が増加している。
3. 大細胞癌
  発見された時にはかなり進行した状態のことが多いが、
状況によっては手術によって完治させることができる。
4. 小細胞癌
  進行が早く、手術によって完治が期待できない癌。
一方、抗癌剤が効きやすく効果によって延命が期待できる。
 手術は癌の進行度および発生部位によって肺全摘術を行うか
葉切除(片側肺の3分の1から3分の2の切除)で済むかが決まります。
特に、肺全摘術が必要な場合では術後の呼吸困難や肺炎などの
術後の致死的合併症の心配が高いのですが、肺癌は手術以外では治せないので、
医師より手術の危険性については十分に説明を受けた上で、
勇気を持って手術を受けられるのが望ましいと考えています。

1)原発性肺癌の治療実績
 平成7年から17年までの11年間に行われた呼吸器外科手術症例は138例で、
疾患別では、原発性肺癌60例、転移性肺癌25例、自然気胸39例、
その他の肺疾患4例でした。手術術式別では、片肺全摘術9例、肺葉切除術75例、
肺部分切除術58例〔重複を含む〕が行われました。
原発性肺癌で手術が行われた60例を組織型別にみると、腺癌29例、扁平上皮癌24例、大細胞癌3例、小細胞癌1例、粘表皮癌1例、腺扁平上皮癌2例でした。
癌の進行度では、IA期19例、IB期9例、IIA期4例、IIB期7例、IIIA期11例、IIIB期3例、
IV期1例であり、これらに対して片側肺全摘術8例、肺葉切除術53例、
肺部分切除術23例(重複あり)が行われました。

2)原発性肺癌の治療成績
 術後の5年生存率は、IA期54.1%、IB期52.8%、II期30.0%、IIIA期6.7%で、IIIB期、IV期に
生存例は得られませんでした。白日らがまとめたわが国の全国集計では、
IA期79%、IB期60%、IIA期59%、IIB期42%、IIIA期28%、IIIB期8%と報告されています。
当院の成績は全国集計の成績に比して若干低い結果でありました。
この理由は不明ですが、当院では高齢者が多い傾向があることや、
遠隔転移の評価が十分でなく病期を過小に診断していた可能性などが考えられました。

 肺癌の治療成績(5年生存率)
病期
当院の5年生存率
全国の成績
I A 期
54.1% 79%
I B 期
52.8% 60%
II A期
30.0% 59%
II B期
42%
IIIA期
6.7% 28%
IIIB期
0% 8%

3)手術危険性・死亡率
 60例中2例〔3.3%〕が手術後1カ月以内に合併症が原因で亡くなりました。
死亡原因は、術後早期の肺塞栓症が1例、腹腔動脈血栓症による
多臓器不全が1例でした。またこの2例を含めて3例〔5.0%〕が退院できずに
亡くなっています。重篤な合併症としては気管支断端縫合不全を2例〔3.3%〕に
認めました。うち1例が膿胸から敗血症をきたし術後2ヶ月で死亡しました。

4)肺癌の抗癌剤治療
  ただ今、準備中です。もうしばらくお待ちください。


(2)転移性肺癌
 移性肺癌は大腸癌、直腸癌など他に癌の病気があり、
これが肺に転移を起こしたものです。以前は、もう末期の癌であると
考えられていましたが、@おおもとの癌が完全に切除されている、
A肺以外に転移がみられない場合は、手術によって癌が完治することもあることから、
手術によって完治が期待できる患者さんには切除術を行うことがあります。
しかし、転移の数が多すぎてすべてを切除できない場合は
抗癌剤治療を考えるようにしています。
特に、両肺に転移があり切除術を行う場合は、術後の肺合併症が心配され、
また、全例人工呼吸器による治療が必要となるなど、
生命の危険が高い治療ですので、十分に医師と相談の上で
手術を受けるかどうかをお決めになるのが良いと思われます。

1)転移性肺癌の手術成績
 原疾患別では、大腸・直腸癌14例、乳癌3例、肺癌4例、食道癌1例、尿管癌1例、
骨肉腫1例、原因不明の癌1例でした。これらに対して、一期的両側開胸による切除術を
6例(うち胸骨横切開による両側開胸術を5例に施行)に、14例に対して片側開胸による
切除術を行ないました。術式別では肺全摘術2例、肺葉切除術17例〔重複あり〕でした。
これらの症例で手術直接死亡例、在院死亡例を認めませんでしたが、
両側開胸例では全例に人工呼吸器を必要とし、離脱までに平均14日間を要しました。
   

  ・乳癌
    1)乳癌治療の考え方
 乳癌治療の基本は、腫瘍の十分な切除とリンパ節郭清を行う手術療法に、
女性ホルモンを抑えるホルモン療法、抗癌剤治療を組み合わせることです。
手術には乳房を全摘する方法と乳房を温存する手術があります。
従来では全例乳房を全摘する手術が行われましたが、欧米で乳房温存手術が盛んに
行われるようになり、わが国でも20年ほど前から乳房温存療法が行なわれ始め、
現在約60%の乳癌患者さんが温存治療を受けています。

2)乳房全摘か?温存治療か?

 全摘手術か温存手術かを選択するには、
それぞれにメリット、デメリットがあることを知る必要があります。
@ 全摘手術の方が局所再発が少ない
A 温存治療だけでは残存乳房に約30%の確率で再発が起きるので、
術後の放射線治療が必要。
これによって再発は5年で3%まで減らすことができる。
しかし、温存治療の方が癌が良く治るということではない。
B 長期の生存率では全摘手術も温存手術も同等と言われているが、
温存治療の後に局所再発をきした場合は改めて全摘手術を行う必要がある。
C 全摘手術の後に一定期間経てば、乳房再建手術を受けて乳房のふくらみを
取り戻すことは可能である。
など。
 気をつけなければならないのは、無理に乳房を温存することで
癌を取り残してしまう危険性がある
ことです。
乳房は温存したけれど癌も取り残してしまったのでは癌を治すことはできません。
ですから、癌を完治させるためという観点では、いくつかの条件をクリアした場合に
乳房温存療法は行われるべきと考えています。
日本乳癌学会のガイドラインによると、
@ 腫瘍の大きさが3cm未満であること
A 乳頭と近すぎないこと
B いくつもの乳癌が多発していないこと
C リンパ節転移はないか、あっても少ないこと
が一つの基準と考えています。
 最近、他の施設ではこの基準がかなり緩められ、無理な乳房温存療法が
増加しつつある
ようです。このことには気をつけなければなりません。
具体的にどういうことかというと、乳房の変形を少なくするために
十分な乳腺の切除をしなかったり、リンパ節の切除を十分にしなかったりなどです。
これらの不備を放射線治療や抗癌剤治療で補おうとする施設も増えてきています。
今のところ、その弊害は表立ってはいませんが、
近い将来には温存治療での高い再発率、生存率の低下などの心配が残ります
なぜなら、全身に再発してではもう完治はできないからです。

3)手術の実績

 平成4年から平成17年の14年間に行った手術件数は597例でした。
平均年齢は56.4歳でした。
 手術術式の内訳としては、乳房全摘術が乳癌手術の9割を占めており、
乳房温存手術は約1割でした。手術術式はすべて患者さん本人の
インフォームド・コンセントを基にした選択によりますが、
他施設に比べると乳房温存手術の割合が少ない結果でした。
その理由は、
@ 乳房温存療法では放射線療法が必要で、
放射線治療に対する恐れの気持ちがあること
A 放射線治療を受けなければ約30%、放射線治療を受けても約10%の
局所再発の心配があること
B 局所再発の心配があるのならば、
乳房全摘手術をうけて精神的にすっきりしたい
などでした。
 しかし、平成21年には乳房温存手術を希望される方が、
全体の30%まで増加しており、これから当院でもこの方法が増えるものと考えています。
病期別にみると、0期16例、I期256例、IIA期145例、IIB期97例、IIIA期20例、IIIB期26例、
IV期20例でした。

4)治療成績
 各病期別の5年生存率および10年生存率はそれぞれ、病期I期96.4%、89.9%、
IIA期88.5%、86.9%、IIB期87.5%84.4%、IIIA期79.3%、79.3%で、IIIB期60.3%、48.3%、
IV期では24.3%、24.3%でした。国立がんセンター中央病院のホームページによると、
国立がんセンター中央病院乳腺外科では1704例の乳癌手術症例の成績を
5年生存率でI期90.6%、II期78.6%、IIIA期64.1%、IIIB期33.0%、IV期10.9%であると
公開しています。一概に比較できませんが、当院の成績は5年生存率において
国立がんセンター中央病院の成績をしのいでいる
と考えられました。
加えて、平成18年12月5日に日本経済新聞社が乳癌治療ランキング表を
発表しましたが、上位30病院の成績と比較しても特別に劣るものではありませんでした
当院では乳腺専門医といわれる医師の常勤はなく、
消化器外科を専門とした一般外科医が乳癌診療を併せ行っています。
これからますます増加することが予想される乳癌治療においても、当科は乳癌死を
できるだけ出さないという点において水準以上のレベルと考えられます


乳癌の術後の生存率


病期
5年生存率
10年生存率
I 期
96.4%
89.9%
IIA期
88.5%
86.9%
IIB期
87.5%
84.4%
IIIA期
79.3%
79.3%
IIIB期
60.3%
48.3%
IV期
24.3%
24.3%


5年生存率


病期
当院の5年生存率
国立がんセンター
I 期
96.4%
90.6%
IIA期
88.5%
78.6%
IIB期
87.5%
IIIA 期
79.3%
64.1%
III B期
60.3%
33.0%
IV期
24.3%
10.9%


5)手術の危険性・死亡率
 治療成績をみると2例の在院死亡例を認めました。死因はいずれも肺塞栓症で
1例は術後4日目に亡くなり、1例は退院予定前日に亡くなっています。
   

  ・甲状腺癌/癌を疑う甲状腺腫
    1)「甲状腺」の病気
  乳癌検診などで偶然に甲状腺の異常を指摘される場合が多くなっています。
「甲状腺」という病気があるのではありません。甲状腺の異常を大きく分けると、
甲状腺癌、甲状腺腫、腺腫様甲状腺腫のようにしこりを作る病気と、
慢性甲状腺炎(橋本病)のようにだんだん甲状腺機能が低下していくため、
甲状腺ホルモンを補う薬を飲む必要性が出てくるかどうかの病気や、
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)のように甲状腺の働きが異常に強いために
薬で抑える必要がある病気に分けられます。これらの診断は、
採血の検査とレントゲン検査、超音波検査で大体の診断が可能です。

2)甲状腺癌
 甲状腺癌はほかの癌に比べると進行も遅く、
すぐに命にかかわることの少ない癌です。しかし、放置すると傍にある気管や食道、
頚動脈、声を出す神経(反回神経)に癌が及んでしまい
さまざまな症状を引き起こしたり、全身に転移をおこせば命にかかわってきます。
よって、癌と考えられる腫瘍の場合は手術で切除するのが良いと考えています。
良性か癌かの判断に迷う場合は定期的な検査によって経過を観察し、
やはり癌の疑いが強いと考えられる場合には手術を勧めるようにしています。

3)手術の実績

 甲状腺の手術は全身的な影響が少ない手術ですが、全身麻酔が必要ですし、
甲状腺の全摘が必要な場合は一生、甲状腺ホルモン剤の服用が必要です。
また、甲状腺のすぐ後ろには声を出す反回神経があり、
手術時に触るために麻痺を起こし声がかすれてしまうことや、
甲状腺のそばにある上皮小体(副甲状腺)の働きが弱くなってしまい、
血液中のカルシウムの値が下がり手がしびれたり、
こわばったりの症状が出る危険があります。
手術を受ける際はよく医師と相談の上でお決めくださると良いと思います。
  平成11年から17年の7年間に、当科では68例の甲状腺癌の手術を行ないました。
うち、1例が切除不能で術後1年6か月に癌死した他は癌による死亡例がありません。
また、1例で術後1日目に脳梗塞を発症し、術後2年で肺炎により在院死しています。


H.11
H.12
H.13
H.14
H.15
H.16
H.17
甲状腺の手術
29
37
22
15
16
21
7
うち甲状腺癌の手術
18
22
8
7
6
4
3

   




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  ・脳腫瘍

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